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                      知能障害児・者の心理的指導

 抽象が不得手な知的障害児・者の心理的指導
   
                      生活単元学習」「作業単元学習」

  これらは実際の生活や作業をする中でさまざまな学習をさせることをねらった指導法で,知的障害児・者の抽象が不得意であるという思考面における主要な心理特性を配慮して考え出されたものである。



 最近の心理学大脳病理学の発達に伴った新しい指導法

                  「行動療法」にもとづく指導,「感覚・知覚−運動学習

    これらの指導法は知的障害を合併した他の障害児・者や,特に遅れの著しい知的障害児・者の指導でも効果を上げている。 



行動療法にもとづく指導

 行動療法にもとづく指導とは学習心理学の研究成果であるオペラント条件づけ(道具的条件づけ)を利用した指導のこと

 条件づけとは,学習理論にもとづいて新しい行動をひきおこさせたり強化することで2つの種類がある。

  @応答的条件づけ(古典的条件づけ)(パブロフの条件反射)

   パブロフの発見したこと。
    ・生体に刺激を与えると刺激に応じて反射が起きる。

    ・そして関係のない刺激では反射は生じない。
     (食物を提示すると必ず唾液や胃液の分泌が行なわれ,音を聞かせると耳をそばだてるという
     行動がみられる。しかし,音を聞かせることで唾液や胃液の分泌をひきおこすことは決してない。)

    (反射または反応が起きる刺激を関係刺激,反射または反応が起きない刺激を無関係刺激という。)

    ・唾液や胃液分泌の場合,関係刺激は食物であり,無関係刺激は音である。

    ・提示された刺激が無関係刺激でも,関係刺激と組み合わせ,何回か与えられると,
     本来反射を起こさなかった無関係刺激だけでも反射や反応が生じる。
  
 Aオペラント条件づけ(道具的条件づけ)(スキナーの白ネズミのレバー押し)

   スキナーは条件づけの研究のために特別な装置を開発した。
   その箱は「スキナー箱」と呼ばれている。その中には,レバーと餌皿がセットされていて,レバーを押すと餌皿に
   自動的に錠剤状の餌が落ちるようしかけられた。スキナーはそこへ白ネズミを入れてその行動を観察した。
  
    白ネズミはその仕掛けに気がつかない→白ネズミはふとしたことからレバーを押した→すると餌がでてきた
    (しかしその時点では,ネズミは続けてレバーを押すことはしなかった)→→ネズミはまた自らレバーを押した
    →何回かこのようなレバー押しと餌の放出が繰り返されるネズミはレバーを押せば餌を得ることができることを知った
    →頻繁なレバー押しが始まった。〕


  この白ネズミの行動は
   @自発的に行なわれた行動に基づいており,その行動と餌が結びつくことによって
   次ぎの行動が生まれる。つまり、
   A新しく形成された,あるいは条件付けられた行動事態がその行動を強化させる手段
   または道具となっている。

   この@とAは,パブロフの条件反射が受動的で応答的あったのに対して,大きな特徴である。
   オペラント条件づけ,または道具的条件づけとは,
   「自発的に引き起こされた反応や行動を報酬や罰によって強化させたり,般化させること」をいう。

   オペラント条件づけで使用される報酬や罰のことを強化因子という。
   般化とはある状況で形成された反応や行動がそれと類似したほかの状況でも生じることである。

   人間の複雑な行動の形成やその変容ではオペラント条件づけによるものが多いといわれている。
   このオペラント条件づけが心理療法にとり入れられ発達したのが行動療法である。

                  ◆具体的な例(排泄の指導)◆
   〔養護学校小学部一年生を対象に排泄の指導が指導された。
    行動療法においては,行動を下位の行動を分析し,(分析された行動をステップという)
    一つ一つのステップを徹底的に指導することを重視する。このような下位行動への分析を行動分析という。

   排泄行動の行動分析(ステップ分析)(男子)
    1.トイレに行きたいと知らせる, 2.ハンカチがあるかどうか確かめる、3.トイレに行く, 4.戸を開ける, 5.戸を閉める, 
    6.便器のところへ行く,7.便器の前に立つ, 8.ズボンのボタンフックまたはチャックをあける,9.パンツをあける,10.用をたす, 
    11.便器の外にもらさないようにする, ・・・・・・・・・20.消毒石鹸液のプッシュボタンを押す, ・・・・25.水道の栓を閉める,・・・・・
    30.ハンカチをたたむ, ・・・・34.トイレに行ってきたことを報告する。

     指導前の評価;A自分でできる, B指示されればできる, C手伝ってもらう

     指導の構成;6回の一斉指導と25回の個別指導

     報酬(強化因子);社会的強化因子:「よくできましたね」「よいこだ」
             生理的強化因子:みんなの前で「自分でできるようになりました。そこでこれをあげます」といって
                        お菓子を与える。同時に拍手をする。

    
  行動療法を基礎としたオペラント条件づけによる指導では、次のような配慮が必要
   a)対象者の実態を十分に把握すること。
   b)形成したい行動を細かく分析してステップ化し,行動の形で具体的な指導目標を作ること
   c)対象児に最も適した強化因子を見つけておくこと
   d)反応に対して即時にフィードバックすること(報酬や罰)。
   e)行動の変容の過程をグラフ化するなどして記録すること。



■感覚・知覚と感覚・知覚−運動の指導

  18世紀 フランスのセガンによる「生理学的教育法」

    感覚教育に一つの基礎を置いた指導法

    1837年 ↑の方法に基づいた知的障害者に対する教育が開始以来,アメリカの
          知的障害児学級でも採用され,各地で多大の効果を上げる。

  イタリアのモンテッソーリ「知的障害児や幼児にとってを感覚教育は,教育的に重要である」

  モンテッソーリの感覚教育の内容の概要
   @視覚に関すること;色の認知と弁別,形の認知と弁別,量の弁別,目と手の協応作用

   A聴覚に関すること;音の認知と弁別
             音源認知による位置または空間認知と身体移動・音声反応と協応動作

   B皮膚感覚に関することの弁別,の大小・相違・形状などの弁別
             粗い・なめらかの弁別,振動刺激の弁別・弾力・粘性のあるものの弁別

   C運動感覚に関すること;上・下肢 の屈伸・回旋などの動作・視知覚・認知覚との協応動作
               押す・引く・たたく・つまむ・握るなどの動作

   D味覚;甘味・酸味・塩から味,苦味などに関すること。

   E嗅覚;においに関すること。

         ******************************************************************************

  19世紀後半 要素−連合主義の心理学が中心

   ヴント心理学
     ・人間の行動,すなわち直接経験は心的複合体と称するものによって成立している。
     ・その心的複合体は単一の心的要素の結合によって形成されている。心的要素とは
     ・視覚や聴覚のような感覚や 快−不快 のような感情のことである。

    この考え方にもとづけば,人間の知的行動や学習は,
     運動・感覚・記憶・思考などの諸機能によりささえられているため,
     指導にあたっても個々の機能の指導,たとえば運動訓練や感覚訓練,
     をすればよいということになる。

  現在 単一の心理機能に対する形式的な指導では充分さに欠けるというのが一般的

  感覚・知覚・認知・概念の指導に関する最近の研究
    知的な発達には階級的構造がある。→基礎的な学習段階から徐々に指導すべき。

   ケファートフロスティング
    子どもの知的学習の段階は,感覚−運動
   
     第1段階;感覚−運動の段階
          操作・移動に関する学習→運動能力・体についての意識・
          皮膚感覚・筋肉運動感覚・平衡感覚・感覚−運動能力が発達する。
    
     第2段階;知覚の段階
          形・位置・方向・空間関係・ゲシュタルトについての学習と
          形態・位置・方向・空間関係・ゲシュタルトの知覚と
          知覚−運動能力などが発達する。

     第3段階;認知または概念の段階
          抽象化・シンボル形成・言語化の学習
          抽象化・シンボル形成・言語化の能力の発達)
    
  大脳心理学・神経心理学
   失認・失書・失行などの大脳病理症状や文字の読み書きなどの知的行動における
   心理過程とその異常についての研究を発展させた。
   (原因と症状に応じて,運動や感覚などに対する治療的な指導が効果的である。)
 
 このように,最近の研究にもとづいて,セガンの生理学的教育法やモンテッソーリの感覚教育は再検討と再評価がなされるとともに,感覚や知覚に対するさまざまな新しい指導法が開発されつつある。

  ブレレトンの脳性小児麻痺の指導法
    1)物体に触れたり感じたりして獲得する情報の正確さに関する指導
        いっしょにチョコレートクッキーを作って材料を味わう・匂いをかぐ・触れる
        見る・聞く・目を閉じてなんだったかをたずねる。目を開いて確認する ,など。

    2)身体の位置の感知に関する指導
        お医者さんごっこをして,包帯を巻いたり,薬を飲んだり,さまざまな姿勢をする。

    3)物体の距離・位置・配列の感知に関する指導
        積み木の箱入れ競争や身体の正中線についての指導   
 
    4)状態にあった適切な運動の企画能力に関する指導
        平面と直立概念の指導や水平線と垂直線のゲームなど。

    5)視覚からの情報把握に関する指導
        シャボン玉割りや風船につき,物品と写真や絵とのマッチングなど。

    6)注目すべき物体の選択に関する指導
        眼球運動の指導や簡単な図−地ゲームなど。

 また,これまでに幼児に対しておこなわれてきた音楽教育の1つとしてのリトミックに関する指導も,感覚・知覚ー運動学習から再評価され,知的障害児・者をはじめとしてその他の障害児・者にもさかんに適用されるようになった。



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                                01/11/28




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