∇動機motiveと動因drive
心理学では人間を行動に駆りたてる要求・衝動・欲求・欲望などを全て含む概念として
動機ないし動因という言葉を用いる。
動機 優越・承認・親和など、社会生活の中での経験や学習によって獲得された心理・社会的欲求を意味する事が多い
動因 飢え・渇きなどの生理的欲求を指すばあいが多い
▽動機づけmotivationの定義
motivationとは人間に行動を生起させ、その行動を方向づけ持続させる一連の力動的な心理過程
動機づけられた行動は速く,強く,積極的かつ一貫的で長続きする
motivationは行動の推進力の働きを持つ
行動を始発する働
一定の目標に行動を方向づけ導く働き
行動を強化する働き(行動の結果により、その行動の再現可能性を高めたり低めたりする働き)
行動を生起させる外部刺激を目標goalあるいは誘因incentiveという
動機と目標は密接な関係にある
動機が強いと目標は強い誘因となり目標がもつ魅力が強いと強い動機が引き起こされる
@動因低減説 drive reduction theory
W.B.キャノンは生体内部の生理的均衡状態をホメオスタシスと名づけホメオスタシスの不均衡の回復
ないし維持を目指す生理的欲求から動因が発生しそれが人間を行動にかりたてると考えた。
homeostasis 生体が環境への適応や生命維持のために営む動的な平衡状態
例えば、生体内部の水分欠乏症は水分摂取行動を起こさせ、生体は平衡状態を回復する。
A期待価値説 expectancy value theory
動機づけの強さは活動により一定の結果が得られるという期待の強さとその結果がその個人に
対して持つ価値の大きさとによって決定される。
∴動機づけの水準は課題・困難度など個人条件・価値観・能力などの個人的要因に影響を受ける
B内発的動機づけ説
人間を、本来活動的で環境との相互交渉を積極的に行いながら自らの有能さを追求していく存在とみなす説。
∴人間は内在する好奇心や探索心といった内発的動機によって動機づけられていると強調
∇生理的動因と社会的動機
動機づけ心理学では人間を行動に駆りたてる動機を2つに分類する
生理的要因=基本的欲求=固体の生命維持あるいは種の繁栄
飢え・渇き・排泄・睡眠・苦痛回避・性
社会的要因=社会生活を通して獲得される動機
優越・達成・承認・自己顕示・支配・攻撃・親和・模倣・獲得等の欲求
(これらはH.A.マレーによってリストアップされた)
※生理的動因は生理的満足と関係深く,誰もが共通
※社会的動機は精神的・情緒的満足と関係深く,万人共通ではない。生まれ・育ち現在の社会や文化によって異なり
そこには個人さや文化差がみられる。
∇動機(欲求)の階層性
フロイトは行動を説明する基本的動機としてリピドー(性衝動)と攻撃衝動を考え
アドラーは優越が主要な動機であるとした。
A.H.マズローは人間の動機(欲求)には階層性があると考えた。(↓の図参照)
発達につれて下位に位置する、生理的欲求や安全・安定を求める欲求の影響を次第に脱し,所属と愛情や自尊と尊敬の欲求等、より上位にある社会的・人格的欲求が働くようになると言う。これらの欲求はいずれも外からのものや人によって充足される。それにより緊張が解消されるといい欠乏動機と名づけた。この欠乏動機がかなりの程度満たされると、終局的には自己実現(self acutualization)の動機が出現する。自己の才能・能力・可能性を十分に生かし、自らを完成させ最善を尽くそうとする働き(=自己実現)を成長動機とよんだ。
成長動機は自己充足的で、充足により休止せず、周囲に影響されない。(マズローは階層序列があるとかんがえたが、その後の研究で、必ずしも下位の欲求が満たされなければ上位の欲求が 出現しないわけではないことが証明されている。)
∇外発的動機づけと内発的動機
外発的動機づけ=外部からの報酬や罰による動機づけ(人間の行動を活性化させ持続させる強い力がある)
※しかし外部報酬のみに基づく行動は、その行動を持続させるためにはより大きな外部報酬が必要となるため
欲求不満や挫折の確立が高くなる。
※日常生活の行動や仕事は普通、外発的動機づけと内発的動機づけの両方に基づいているため
ある程度支障無く遂行される。
内発的動機づけ=原型は知的好奇心。熟達や達成・親和的な社会的相互交渉等もふくめる。
※動因低減説(人間は本来、怠け者で自己に不都合が生じない限り自ら進んでこうどうすることはない。)
への反論である。
↓
R.W.ホワイト等 ↓
人間には環境に対して自発的・積極的に働きかけて自らの有能さ・効力感を得ようとする動機づけが本来的である。
R.ド.シャーム
人間には自らが自分の行動の原因であるという自立感・自己統制感を得ようとする動機づけがある(本質)
自己が行動の主人公であるとして自己原因性と名づけた。
E.L.デシ
内発的動機づけの本質は、有能さと自己決定を追及する点にある。人間には自己が有能かつ自己決定的で
ありたいという動機があり、それらに動機づけられて人間は自己の能力を最大限に発揮するため能力を向上させる。
∇達成動機achivement motiveと原因帰属casual attribution
達成動機=基準や目標を立て到達しようとする動機ーやる気とにた概念
「〜をしてはいけない」という制限的な養育態度で低くなる。逆に承認・支持・はげましで高められる
原因帰属→達成度の高い人と低い人では、成功・失敗の原因帰属に違いがある
B.ワイナーによると帰属の要因には「能力」「努力」「課題の困難度」「運」などがあり、
達成動機の高い人は成功を自己の能力や努力に帰属させ失敗は自己の努力不足に帰属させる傾向にある。
∴高い人は努力すれば何とかなるという期待を持ち、動機づけを高い基準に維持できる
達成動機の低い人は成功を幸運や課題の容易さに帰属させ、失敗を自己能力不足に帰属させる。
∴あきらめや無力感をもち努力を放棄する。水準が高くならない。
∇動機づけを高める方法
@自発的な行為に繋がる知的好奇心・興味・関心を喚起する。
A目標に対する価値や意義を認識させる。
B達成可能な目標を設定する(成功や達成の見こみが五分五分の挑戦的な目標を与える)。
C目標を明確にし、それを自覚させる。
D自分の力で成功した喜びを感じ取らせる
(効力感の獲得,例えば自分の努力で成功したという体験をもたせる)。
E行為の主体は自己であるという意識を持たせる
(自己原因性を自覚させる)。
F成功や失敗の原因を正しく認知させる。
G行動の結果をフィードバックする
(学習や』動機づけを促進させる「結果に関する知識」を与える)
H競争と協同を利用する。
I賞罰を適切に与える。