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子どもの不適応行動
現代日本の憂慮すべき・解決すべき問題として,子どもたちのいじめ・不登校・自殺・非行などがあります。
子どもたちは,社会を映す鏡と言われていますが,鏡の役割とはなんでしょう。
私達は出かける前に,鏡を見てみなりを直します。
すなわち,鏡は自分自身を客観的にながめ,自分の内面との一致をはかるための役割を持っています。
子どもたちの前述の行動が社会を映していて,それが社会への不適応行動であるというのなら,
私達自身(社会)が変らなければなりません。
また,子どもたちは,大人よりも,柔軟な心も持っているはずです。
不適応に至った子どもたちに,適切な援助の手をさしのべることも必要です。
子どもたちは,私たちの何を映しているのでしょうか。何を矯正せよと訴えているのでしょうか。
健康とは,「身体的・精神的・社会的に良好な状態であり,単に疾病・病弱の存在しないことではない」。
このWHOの概念から,「心の健康 」を考える時,
前述の子どもたちの行動は明らかに,精神的・社会的に不健康であると思います。
「心の健康」を取り戻す術はないのでしょうか。
社会が病んでるから子どもたちも病んでいるのだと言いきる前に,
解決法を模索しながら,子どもたちの心の問題について考えて見ました。
■適応について
適応とは,生活体と環境とが調和した関係を保つことをいいます。
例えば,幼児が遊んでもらいたく(要求)て母親にいろんな働きかけをしたとき,
母親がその子どものはたらきかけに応えたときが適応状態で,無視されたときは不適応状態です。
そして不適応状態の場合は不満が生じてきます。
この場合など,幼児はおもちゃを母親に投げつけたり,j地団太踏んで泣きわめいたりします。
人間には生まれつき自然要求があり,
発達とともに依存・承認・自己顕示・自立要求などの社会的要求が生まれてきます。
これらの要求は人間に特徴的な行動を起こさせ,環境と能動的に関わるようになります。
しかし不適応状況と不満が慢性化し,防衛規制が効かなくなると,不適応行動が発生します。
では防衛規制とはどのようなことをいうのでしょうか。
■適応規制(防衛規制)について
適応規制とはフロイトによって提唱された概念で,
不満や不安から自分を守る心理的なはたらきのことをいいます。
どのような適応規制があるのか,以下に簡単な説明をしておきます。
@代償;欲求の実現ができないとき,他に代わるもので満足すること.
A合理化;満足できない不満を,自分に都合のよい口実を設けて正当化すること.
B同一視;望ましいと思われる性質を自分の中にとりこむこと.
C投射;自分の持つ望ましくない特質が他人の中にもあるとみなし,自分を欺くこと.
D逃避;困難を避ける為,その場面から逃げ出すことで自分を守ろうとすること.
困難な場面を避ける退避と病気になることによって困難な場面を避ける病気への逃避がある.
以上のように適応規制とは,真の自分の姿を直視しないようにする心のはたらきのことをいいます。
一時的なごまかしであっても,それによって心の緊張が解消されるならば,
それは1つの適応への心のはたらきといってもよいかもしれません。
しかし適応規制が頻繁に用いられ,これだけに頼って行動するようになると,
それはもう不適応行動と言わざるを得ないでしょう。
以下に適応規制もままならないとき現れる子どもの問題行動を列記しておきます。
@心の問題が主に身体面を通して現れるもの;
気管支喘息・発作・食欲不振・嘔吐・チック・点頭けいれん・高血圧・心拍増etc.
A神経症的問題行動;
偏食・拒食・過食・不眠・夢中遊行・夜驚・悪夢・緘黙・吃音・
夜尿・頻尿・爪かみ・チック・指しゃぶり・登校拒否・学業不振etc.
B反社会的問題行動;
攻撃行動(けんか・乱暴・放火・反抗etc.)・非攻撃行動(うそ・怠学・徘徊etc.)
以上のように,現れる不適応行動はさまざまですが,要因も多様化しているのでしょうか。
以下では,私の体験に基づいて不適応行動を考えてみました。
■事例
@登校拒否とチック症
−12歳男子N(中1)・家族構成(両親と1歳年上の兄)・特殊学級在籍(学区外)−
Nは知能の遅れがある健康な礼儀正しい生徒でしたが,夏休み以後欠席が目立ち始めました。
朝になると腹・頭・足が痛くなったようです。
でも,学校には,その原因は見当たりませんでした。
私達は,登校拒否の初期症状と理解し,対策を検討していました。
そんなある日,隣街の公園でNが補導されたのです。
担任の先生に引き取られ,学校にもどってきたNの眼は窪み,顔面にチック症状が現れていました。
Nは,学校に「行きなさい」という母親の命令に従い,「家を出て,毎日いろんな所を歩き回っていた」のです。
以後,登校したものの,チックはどんどんひどくなり,弁当も捨ててしまい,痩せ細ってしまいました。
私達は,保護者の許可を得て,病院に連れて行きました。
小児心療内科の先生は,
「Nは母親との関係が悪い!母親の作った食事を食べないのだから体力も持たない,
入院して病院から学校へ通うように。」と診断されました。
(私が,心療内科を知ったのは,この時が初めてでした。二十三歳・教員一年生の時のことです。)
合わせて,Nの家族全員が診察(カウンセリング)を受けました。
数回の診察後母親は
「兄は勉強もできて良い子なのに,Nを特学に入れるよう指導されたのはショックであったが,
学区外であったため納得したのです。」
「兄の学校でPTAの役員をやっていて忙しいのを口実に,
NのためにY中に足を運ぶ気には,どうしてもなりませんでした。」
「Nは幼い頃より私にはあまりなつかず,
いつも大きな眼で見つめられると睨まれているようで好きになれなかった。」
と自らを省みて泣き崩れました。
この事例では,12年間のNと母親の不適応状況が,
“特殊学級に入れられた”という母親の意識の持ち方で,
一気にNの不適応行動へと繋がったと推測できます。
小学生までのNは
「良い子であることで,母親のプライドを傷つけまいとして一生懸命ふるまっていた」のですが,
母親は自分にそっくりな眼を持つNを赤ちゃんのころより「遠ざけて」いたのでしょう。
Nは適応規制もままならないまま,心の病気になり母親に限界を示したと考えられます。
このような事例は多いそうです。
親は子どもに期待しすぎてもいけませんし,
あまりにも,期待をしなさすぎてもいけません。難しいものえす。子育ては。
A無気力生徒と母親
14歳男子S(中2),家族構成(両親・10歳上の姉),万引き歴あり(小学生時代).
Sは学業成績オール1でしたが,知能は普通よりも高い,長身で早熟な見栄えの良い生徒でした。
授業中は寝てるか,いたずらをしているか,手足を投げ出して天上を仰いでいました。
教師には,学習意欲の皆無な「無気力」な生徒として写っていました。
スカートめくりは中1で卒業したものの,
いたずらはどんどんエスカレートし,高価な品物を持ち込んではいたずらを繰り返し,
また,知能犯でもありました。
いたずらの張本人は彼であることは推測できるのですが,いわゆる,現行犯ではないのです。
あるとき,タバコを吸っていると思い近づいていくと,タバコに似せて作られたチョコレートであったり,
おもちゃのタバコであったり・・・,でも,本物のタバコとライターも彼は持っていました。
(格好をつけるために持っていると言い張ります。)
私が注意しようと,堪忍袋の尾が切れて大声で怒鳴りつけようとも,
にこにこ笑って・・・・まるで・・・ぬかに釘状態でした。
彼が,喫煙ををしたという証拠はないのですから,両親を学校に呼び出すこともできません。
(両親は学校へきたことはありませんでした。)
家庭訪問の時,学校での様子を母親に話したところ,
母親は
「うちでは良い子です。」
「小遣いは要求されただけ与えてます。」
「オール1でも他人に迷惑はかけてません。」と・・・・
父親にも面接したいと告げたところ,
「主人は出張がちでお会いできません。以後Sにこのようなことしないよう注意しますから。」と言われ,
それ以上踏み込めませんでした。
以後,Sは気まぐれな登校を繰り返し,高校へは進学せず,その後の消息も知ることができません。
彼の場合,あまやかしなのか,親の学校不信なのか,家庭不和なのか,
親離れ・子離れができていないのか,(母親の所有物?)
家庭内暴力があったのかなかったのか
・・・・・・・・・・・
これ以上は推測になるのでやめておきます。
が,
2つの事例は,子どもたちの家庭内での問題を映し出していることだけは,確かなような気がするのです。
子どもにとって,最初の環境は母親であり,家族ですが,
母親や家族の果たす役割が,家庭としての機能が,うまく果たせてないと,
子どもたちは不適応を示すというのが,私の持論です。
不適応かどうかは疑問ですが,
無気力な子どもたちの出現もまた,社会を映し出してる現象です。
「ピーターパン症候群」とよばれる,体は大人でも心はこども,大人になりたくない男の子,
「シンデレラ症候群」とよばれる,ただひたすら素敵な王子様の出現を願う女の子,
「スチューデント・アパシー」とよばれる,大学には行ってみたものの,
やりたいこともさしてなく,留年を繰り返す大学生・・・・・
欲しいものは,幼い頃から全て買い与えられ,
親が教師が地域の大人が,子どもたちに気を使い,
躾らしい躾は親からなされず,一時が楽しければ,それでいいという現代の子どもたち・・・・
を育てたのは,私たちおとなです。
「今の若者は・・・・・・」と嘆く前に,
私たちおとなができることはないのでしょうか。
■心の健康をとりもどすために
事例Aは極端な例ですが,
青年期前期の学業に対する「無気力」な生徒はかなりの数にのぼり,
彼らはおちこぼれ・不登校・非行へと必然的に移行して行く場合が少なくありません。
学歴社会の弊害なのでしょうか。
ならば,社会全体の中の学校教育のあり方をもう1度考え直す時期に来ています。
しかし,問題はもっと奥深いと考えます。
(いえ,実はもっと単純なのかもしれません。)
子どもたちのパーソナリティの基礎を築く親子関係を回復させる事,
家庭・学校機能の充実,ひいてはおとな社会の矯正は,
いっときの猶予もなく行われるべきです。
(阪大付属小学校の事件の犯人の父親のコメントを聞くたびに,私は愕然とします。
親がこうだから・・・・
最近は「親の顔を見たい」とか「お里が知れる」とかいうことは,あまり聞かれませんが,
親こそ原点だと思います。
原点がないから,根をおろす場所がないから,適応すべき環境がないから,・・・)
「子どもの不適応行動」の要因は,
必ずや子どもの発達過程にあり,親や教師のパーソナリティにも関わっています。
社会を形成するおとなたちこそが健康な心をもち,
自己実現へ向けて努力する姿を子どもたちに見せること,
さすれば,不登校・いじめ・自殺・幼児虐待などのない健康な社会が実現する,
と,
私は考え,なにかしようと行動を起こしつつあります。
02/01/16
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